私がWordやExcelによるマニュアル執筆と印刷物の配布に痺れを切らして、社内向けのWikiサイトを立ち上げたときの話をします。
概要
まず、何がどうなったのか説明すると...
前提
以前はこんな状態・環境でした。
- マニュアルはメールにPDF形式で添付されて飛び交い
- 情報を共有できるポータルサイトが存在せず
- 過去のマニュアルは行方不明
- たまにファイルサーバーに保管されているが、古すぎてやくたたず
- 更新しようにもPDFなので作り直し
結果
(私が執筆に関わるマニュアルに限った話ですが)こうなりました。
実現方法
いくつかのツールを検討した後、Growi という Wiki を使うことに決めました。
Growi は WESEEK,Inc. さんが開発されているOSSで、誰でも無料でサイトを立ち上げる事が可能です。
私は自前でサーバーを立てたくなかったため同社の運営する GROWI.cloud という SaaS を利用しています。(もちろん有償版)
最近では(自分を除いて)日間20PV~100PVあるようなので、それなりに活用していただけているという認識です。
しかし、社内に根付いた文化を塗り替えるのは容易なことではなく、未だに私以外の人が更新することはまずありません。
自分が情報を公開する場が出来ただけでも十分な成果なので、執筆者はこのまま増えなくても良いかなと思ってます。
従来の運用の問題点
従来の紙・PDFによる運用には、マニュアルを長期的に有効活用しづらい点に問題があると考えています。
問題1 ファイルサーバーはアクセス手段が限られる
メールは論外として、仮にファイルサーバーに情報を整理して入れるようになったとしても、いずれ限界が来るのは目に見えていました。
というのも、あなたがもしファイルサーバーに入っている膨大なデータから、ある情報を見つけ出したいと思った時どのような方法を取りますか?
普通の人は、それらしいキーワードのフォルダを辿って開いていくと思います。
少し詳しい人は、(Windowsエクスプローラの)右上の検索ボックスから検索するかもしれません。
しかし、Windowsの検索機能は使い勝手が悪く、ものすごく低速です。
ファイルからインデックスを構築して検索できるようにしてくれるソフトウェアもありますが、データ形式がバラバラなので煩雑になります。(後述)
Wikiならば、ツリーからのアクセスの他に、高速な全文検索と、設定したタグ検索ができます。
問題2 最新のマニュアルにたどり着けない
ファイルサーバーによる共有では、文章を移動したりフォルダ名やフォルダ構成を変えてしまったらリンクやショートカットが死んでしまうという問題があります。
そのため、文書間で「こちらを参照」といったリンクを貼っても、リンク切れのメンテが大変で、全てのリンクを維持し続けるのは現実的ではありません。
また、コピーしたファイルを持ち出したり、メールで送ったりされるため、せっかくサーバー上のファイルを更新しても、古いマニュアルが社内を彷徨うことになります。
Wikiならば、永続的に使えるURLを発行できるので、外のページからリンクを貼っても切れることはありません。URLの共有である以上、常に最新のページを閲覧してもらうことができます。PDFで配布したとしても、最新情報はWikiを見るように周知しておけば、情報が古くなって使えないというトラブルを解消することができます。
※URLの種類がツリー構造に依存していない「パーマリンク (固定リンク)」に対応している必要があります。
問題3 紙PDFのマニュアルは長期的に保守できない
ファイルサーバーで管理すると、データ形式がバラバラになります。
ファイルサーバーに入れてあるのがxlsxやdocxならまだ良いのですが、必ずPDF形式で保存する人が現れます。
無意識的に「他人に編集されたくない」という意思が働くのか、「印刷をしやすいように」という配慮なのか分かりませんが、PDFしか残されていないことがあります。
多くの業務や操作のマニュアルは、常に最新の情報を提供しなければなりません。
(誤字修正くらいなら編集できますが)PDFしかない状態から更新を重ねていくのは不可能でしょう。
しかも、執筆者が何度もチェックのために読み返すような機会は少なく、実際に使っている人が間違いに気がついて直す必要が生まれるはずです。
つまり、マニュアル類はPDFにせず原本のまま共有して、その場で直せるようにしたほうが更新されていく可能性が高くなるのです。(ファイルにコメント入れて報告してもらうという手もありますが、いまだかつて貰えたことはありません)
そのときにデータ形式がバラバラだと、見れない人とか編集できない人が現れます。Excelなどは表示が意図した順番になっているとは限らず、読み物としては使いづらいものです。その人の環境都合で的外れな修正をされかねません。(こうしてA1に揃えるExcelお作法が生まれる?)
Wikiならば、フォーマットは統一され、誰でも手軽に閲覧できて、ワンクリックで編集画面に入れます。WEBサイトなので「誰々が使用中です」とか「開くのが重い」とか「ファイルが破損しています」なんてこともありません。
誰でも編集できるということは、破壊されてしまう恐れもありますが、編集履歴が残るので、変な修正は取り消したり修正を加えることができます。(本当はプルリク(修正の提案)が送れると良いんでしょうけど)
Wiki使用によるメリット
他にもWikiを使うことで生まれたメリットもあります。
なお、Growi を使い始めてから気がついたのですが、
- Growiのlsx関数)がかなり強力で、自動的にサブページのリンク集を自動生成できます。階層やフィルタ使いこなすことで、面倒なリンクをメンテする手間がかなり省けます。
- Growi独自のMarkdown拡張によるdraw.ioを文章中に埋め込める機能は、はっきり言って神です。マニュアルを完全にGrowiに移植できたのは、どう考えてもこれのおかげです。
- 見出しから目次を自動生成する
@[toc]
も、ページによっては重宝します。
Wiki使用によるデメリット(注意)
- 新しいものの立ち上げには、理解を得るための労力がかかる
- 執筆する人がいなければ、廃れて誰も読んでくれなくなる
- 誰でも編集できてしまうので、不適切な編集が行われる恐れがある(そのための編集履歴管理機能)
- サイト運用のためのコスト(費用/設定/セキュリティ)
他に検討したソフトウェア
Wordpress / ブログ
情報共有サイトの立ち上げが目的なら、Wordpressでも問題ありません。
Wordpressを使い込んでいないので分かりませんが、プラグイン等によりやりたいことが実現出来るかもしれません。
Dropbox Paper
Growiと平行して1年くらい運用していましたが、共有文章として使うには課題がありすぎました。
- 共有リンクが漏れると誰でも見れるセキュリティ的懸念
- 執筆前の画面が最終閲覧日順で、あまり整理されていない
- ページが構造化管理されない(フォルダ分けはあるがツリー表示とかにならない)
- 目次ページをすべて自前で作らないといけないが、ページを増やす度に手動で更新するのは困難
以下略
Notion
最近話題なNotionですが、機能が豊富なので上手く使えばアリだと思います。
自分用ノートは、DropboxPaperからNotionへ完全に移行しました。
Markdown記法を使わずに書けるので、ライトユーザーでも最初だけ少し頑張れば使いやすいと思います。
いろいろ検証した結果、以下の理由から社内Wikiとしての運用は不可能だと判断しました。
- インラインフレームを使ったサイト埋め込みができず、Embed機能に頼ることになる。Embedではログイン認証が必要なサイトは表示されないことがある。
- Growiでは組み込みで気軽に使えるフローチャート描画ソフト Draw.io がEmbed(別サイトの埋め込み)しか出来ない。表示されない。
- コストがユーザーライセンス方式で、人数が増えるほどコストが激増する。(閲覧しかしない人でも非公開シェアするには有償アカウントが必要になるので、全社員への公開に使えない)
- 共有リンクによるシェアが簡単すぎてセキュリティ的懸念が強い
- まだUIが日本語対応しておらず、英語NGの人が多い職場なので使える人はいない。
- タグ機能がない。タグ検索できない。
- 指定したページ配下のページをツリー展開する機能がない
- テーブル(表組み)機能がない(データベース機能では重すぎる)
なお、後半の機能は、ページツリー管理ではなくデータベース管理にすれば、ビュー機能と組み合わせてソコソコいい感じに運用できるみたいです。
まとめ
Wiki運用をはじめて、しばらく経過しましたが、今のところ順調・快適です。
まだまだ紙の文章は減りませんが、少なくとも私からの発信は楽になりました。
文章共有で困っている人は、一度Wikiを検討してみてください。
そして、よければGrowi使ってみてください。
というわけで
目的に一番近かったのは Growi でした。
↓のデモサイトで体験できますし、無料でWikiを立ち上げることも可能です。(無料版には非公開ページを作れないとか、数週間使っていないと自動的にサーバーがシャットダウンされるとか制限があります)